愛して、愛して。まだ足りないの。




















キスして、抱きしめて、頭を撫でて。

何度も何度も繰り返しても、まだまだ、まだまだまだ足りないの。

何度カラダを重ねたって、何度愛してるって囁いたって。

のすべては、まだアナタを求めるんだ。










「・・・で、俺にどうしろっつーんだ」










新聞から目を離さずに、アナタは言葉を投げかける。

メガネの奥の紫暗の瞳を、に向けてよ。

アナタのちょっと冷めた所が、の欲の原因なんじゃないかって思うんだよね。










「だから、もっともっと愛して」





「ンなセリフ、よく言えるな」





「三蔵になら、たくさん言えるんだから」





「そりゃ結構な事で」










まだ、を視界に入れてはくれない。

ねぇ新聞なんて紙切れより、恋人のを見てよ。

そんな文字の羅列なんていつでも見れるでしょ。

は、もしかしたら今すぐにでも家出しちゃうかもしれないんだよ?





・・・追ってきてくれるのかって言うと、解らないんだけど。










「三蔵は、より紙切れがスキなの?」





「うるさくない分、こっちのがマシだ」





「・・・じゃあ、煙たくない分、悟空と八戒の方がダイスキ」





「「・・・・・・・・・・」」










話せば意地の張り合いばっかり。

だって、恋人より紙切れの方がマシってどういう事。

スキでスキで仕方ないのは、だけなのかな。










「・・・は、さんぞーがダイスキ。でも、さんぞーは新聞の方がスキなんだよね?」










これで気に入らない回答をされたら家出してやろう。

心に決めて、じぃっと三蔵を見つめる。

大きな溜息を一つ、新聞を長い指でたたみ始めた。










「俺は好きでもない奴と、恋人なんて関係にはならんが」





「遠まわしの答え方はイヤ」





「・・・ちっ・・・ワガママ娘」





「さんぞーに無理じゃないのだけ、ね」





「・・・・・言えねェよ」










言えない、というのは、何故?

さっき好きでもない奴と恋人になんてならないって言ったから、嫌いという理由は除外できる。

じゃあ、なんでだろう。

恥ずかしいから、なんていうのは・・・無いでしょお・・・。




















「・・・好きだ、愛してる、そんな言葉じゃ足りねェから、だ」




















時が、止まった。










三蔵はちょっとだけ頬を赤くして、たたんだ新聞を乱暴に手にとって読み始めた。

逆さまなのには、気づいてるのかなぁ。

めったに見られない三蔵の照れる姿は、とっても可愛かった。





ぎゅうっと、横から三蔵の首元に抱きつく。

邪魔だと三蔵は呟くけど、言葉とは裏腹に抱き返してくれた。

が羨ましくて羨ましくて仕方が無い、新聞は投げ捨てられている。





やっぱり、新聞みたいな紙切れよりもの方が大事なんだよね。

悟空と八戒の方がダイスキだなんて、ウソウソ。

確かに悟浄も合わせて皆ダイスキだけど、三蔵の足元にも及ばないっていうか?

三蔵みたいに、愛とか好きとか、そんなのでは収まらないんだよ。

ダイスキすぎて、おかしくなっちゃいそうなの。





まだまだ足りないっていう貪欲なだけど、ね。

三蔵のたった一言だけで、あっという間に満たされちゃうの。

でもそれがもつのは1時間くらい。

また足りなくなる。

その時はまた、沢山沢山、愛してよね。










「さんぞー、たくさんたくさん、愛してよ?」





「フン、もう要らない、もう欲しくないって位に愛してやるよ」










逃げるんじゃねェぞ?





そう囁く。

逃げるわけないじゃん、この世で一番大事なヒトから。

に要らないって言わせるのは、すっごい大変なんだからね。
























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