危ない目には合わせたくない。




















「・・・だから、おまえは来るな・・・」










青筋が浮かぶ位の頭痛を耐えるように、額に手を当てた。

けれどもは言う事を聞こうとしない。










「嫌! も捜査協力するんだ!」










さっきから、この一点張り。

亜紀人はただ苦笑するだけ。 付いて来いとも、残れとも言わない。

は諦めずに俺の上着を掴んで離れねェ・・・。










「おまえの力は認めるが、今日は厄介な奴相手にすンだよ」





「だったら余計にを連れてけ!亜紀人に怪我させるワケにいかないでしょ?」










俺にとっちゃ、が怪我する方が嫌なんだが。

必死に上着を離さんとする、亜紀人より10cm以上は背の高い少女。

A・Tは咢以下のレベルだがきちんと練習すれば、きっと追い越すだろう。

それに技の柔軟さ、性格さ、キレ、鮮やかさ、艶やかさなどは絶対的に上。

捜査に協力して貰いたいのは山々。





・・・なのだが。










「女が顔に傷つけたりすんのはマズイだろ、おまえは留守番だクズ」





「大丈夫、亜紀人より綺麗な顔してないから!男尊女卑をするつもりなら、を男と思えっ」





「何、無茶苦茶言ってンだウンコクズ!」










あーあ、また始まっちゃった・・・。

お兄ちゃんと、口喧嘩になると長いんだよねぇ。

お兄ちゃんはを心配して言ってるのに、は気づいてないし。

はお兄ちゃんと一緒に居たいのに、お兄ちゃん気づいてないし。





・・・結局、すれ違っちゃってるんだよね。










「・・・お兄ちゃん、はお兄ちゃんと一緒に居たいんだから連れて行ってあげたら・・・?」










本当はお兄ちゃんにこんな事言うの、苦手なんだけど・・・の為に、ね。

・・・あ、が真っ赤になった。










「な・・・っ!何言ってるんだよ亜紀人!!」










・・・バレバレ、だよね・・・。 でも必死で、何か凄く可愛いや。

お兄ちゃんは僕が見たこと無い顔・・・物凄く間抜けな顔してた。 びっくり、だよ。










「・・・・・・・・・・仕方ねーな・・・来い、クズ」










まさか、とは思ったが。

亜紀人は結構鋭い感覚をしているし、少し自惚れたりもした。

結局、連れて行くことに決定。

真っ赤になった瞬間に離れた手を掴み、外に出た。

ガラじゃねーけど”恋人繋ぎ”、して。




















「・・・っ、バカ逃げろ!!」










バトルを任せ、奴らを呼んでこようと踵を返した所で咢の声が聞こえた。

焦りばかりが滲んだ声色。

自身の血の気が一気に引いたのを感じながら、勢いよく振り返った。

そして視界に飛び込んで来たのは。





背中から下へ堕ちて行くと、追い討ちをかける様に上から近づいて来る男。










「なっ・・・!?」










まだ空中で体勢を立て直したり出来ないには、咢の指示を聞こうにも聞けない。

恐怖心が一瞬にして俺の全てを覆った。 だが、その様子をただ眺めている場合じゃない。

この高さから堕ちれば、まずただでは済まないだろう。

それに男に追い討ちをかけられるとすれば、死ぬ確立が高くなる。





ドンッ





取り合えず追い討ちをかけんとする男を撃っておいた。

相手チームは一応A級。 と違って、空中で体勢を立て直せるだろう、放っておいた。

あとは落下し続ける

今俺が覆面A・Tで助ければ、確実に間に合うだろう。

しかし、ガサ入れの途中だ。 A・Tのロゴを見られるワケにはいかない。

ただでさえ今、銃を出してしまったというのに。










俺は、一瞬でを取ることが出来なかった。










もし此処でを失っても、文句は言えない、泣く事も許されない。

と捜査を天秤にかけて、最後には捜査を取ってしまったのだから。




















「Spin Music」




















背中にある重心を無理矢理足へ、そのまま空中で一回転。

近くの壁に両足をつけて、ホイールがぶつかる一音のみで音楽を奏でながらスピンウォールライド。

頂上へ上って着地。





初めて成功した、自分のトリック。

の心臓はバクバクいってて、咢の言う”ゾクゾク”が解った気がした。

堕ちていくあの恐怖から、まだ練習中のトリックに移していく。

まさに”シン・デッド・ライン”










「や・・・った・・・出来たよ咢!!」










パーツ・ウォウそっちのけで、は叫んだ。

咢がすぐにの傍に飛んで来て、ぎゅうっと抱きしめられる。

そしてすぐに離れた咢の顔は物凄く嬉しそうに笑っていた。










「やったじゃねェか!」





「うん、ホントびっくりだよ自分でも!咢の言うゾクゾクが解った!」





「何のん気に笑ってやがんだこのウンコクズ!!」










バキッ





じんじんと頭に痛みが広がった。

間違いない、こんな痛いゲンコツをくれるのは海人。

痛みに潤んだ目で彼を見上げた。










「ちょっと何すンのさ、うみんちゅ!!」





「誰がうみんちゅだウンコクズ!!散々人をビビらせやがって!!」





「・・・へぇ、ビビってたのかあんた」










つい、本音が出てしまった。

普通ならさらりと耳を通り抜ける事を、咢は耳ざとく聞き取りやがった。

だがは俺の言葉も咢の言葉も聞き取ってなかったらしく

自分の失態に頭痛を覚える。










「とにかく、二度とあんなヘマはするな。失敗したらどうしてくれる」





「まぁ、失敗しなかったから良かったじゃん!」










確かに、失敗はしなかった。

が着地した後に我に返って無線連絡をしたから。

今では俺の部下共が、相手チーム含む観客全員に手錠をかけている。










「あれね、まだ練習中だったんだよ、凄いっしょ!」










いまだに興奮しているは、物凄く嬉しそうに無邪気に笑っていた。

体は震え、息が荒い。

そんなに”シン・デット・ライン”は興奮するものなのだろうか。

そこまで危ない事態になったことは無いから、俺にはわからないが。










「・・・、怪我してるぞ」





「あ、ホントだ・・・」










右上腕に、少し大きめの切り傷。

ライダーの誰かにやられたのだろうか、服は破れ血が流れている。

左腕を伸ばしての腕を掴んで俺に近づけた。

きょとんとしているの目を見つめたまま、傷口をべろりと舐め上げる。

舌が僅かに鉄の味を感知した。










「な・・・っ何すンの海人!」





「あぁ?消毒してやってんだろーが」





「馬鹿じゃないの!ワガママ俺様むっつりスケベ菌がうつるー!」





「黙れミソクズ!ンな菌存在しねェよ!」





「いや、が第一発見者だ!この菌の抗生物質を考えねば!」





「考えンでもいい!!」










普通の女ならここで顔を真っ赤にするとか、もっと他にあるんだが・・・。

こんなガキらしさも、俺がに惚れた要素なのだろうか。

帰ったら俺にこんな心配をかけたお仕置きをしてやろうと、を担ぎながら考えた。















「・・・頼むから、何気にエロい事は家だけに留めてくれ・・・」










俺がポツリと呟くも、海人の耳には届いていないらしく。

そのままヘリへと行ってしまった。





本当は、家でもやめて欲しいところだけど。

























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